【 第1部 】 実戦でよく現れる小ヨセの形

ワタリと言えば、『 ワタリ8目 』という囲碁の格言がある。しかし、果たしてホントに8目の価値があるのか。これは確認しておかなければならない。

→ パターン1

これが、第一線のワタリにおける基本とも言える形ですが、その価値は、4目しかありません。

想定図は、

 黒からヨセと時の想定図をもとにして、白からヨセた時の想定図を考えます。
 黒地、4目減。白地、変らず。よって、これは、4目のヨセですね。

 また、次のような図だと、さらに価値は、下がります。

 すべて、黒からヨセた図をもとに、白からヨセた図を比較して、考えてみます。
 上辺図は、白からヨセた時、右の曲がりのみ段階のヨセになっている、黒地3目減。白地増減なしで、3目のヨセ。右辺図は、これも白からヨセた時、下への曲がりのみ段階のヨセ。黒地2目減。白地増減なしで、2目のヨセ。下辺図は、黒地1目減。白地、増減なし。よって、1目のヨセ。左辺図は、黒が渡っても、白が遮っても、地の増減なし。よって、これはヨセではなく、単なるダメを詰めただけです。

《 補足 》
パターン1の基本図で、白からヨセる場合、下がりでなく、ハネでも結果は、同じことになりますので、OKです。ただ、僕が参考にしている趙治勲先生の本では、下がりになっていたので、そうしました。

→ パターン2

しかし、ちょっと形が変ってくると、相当な価値のあるものもあります。次の形なんかは、逆ヨセ5目(両後手換算10目)です。

想定図は、

実は、これ、少し分からないことがあったので、碁盤掲示板で、あさださんに教えて頂きました。記事番号184

 黒からヨセた時の想定図をもとに、白からヨセた時の想定図を考えます。
 黒地、5目減。白地、増減なし。そして、このヨセは、白の先手ヨセですから、結局、黒から見ると、ワタリは、逆ヨセ5目(両後手換算10目)のヨセとなります。

 同じ、ワタリが逆ヨセ5目になるヨセで、こんなのもあります。というか、実戦では、こういうふうな場合のほうが多いですね。これは、左右同形の図ではありません。

想定図は、

 黒からヨセた時の想定図をもとに、白からヨセた時の想定図を考えます。
 黒地、5目減。白地、増減なし。白の先手ヨセで、黒のワタリは、逆ヨセ5目です。

→ パターン3

最後に、ワタリの価値が最大級になるヨセを挙げておきます。その価値なんと、逆ヨセ9目(両後手換算18目)です。これは、小ヨセというより、大ヨセですね。

想定図は、

 黒からヨセた時の想定図をもとに、白からヨセた時の想定図を考えます。 
 黒地、9目減。白地は増減なし。そして、このヨセは、白の先手ヨセですから、結局、黒から見ると、ワタリは、逆ヨセ9目(両後手換算18目)のヨセとなります。

最後に。

 このように、第一線のワタリは、形によって、その価値は、一定ではありません。『ワタリ8目』の格言は、あくまで、ワタリの重要性を説いたものであるということが分かります。
 なお、念のためですが、実戦では、ワタリは、単なるヨセでなく、連絡して安全を確かめる時にも使われます。ここで扱ったワタリは、あくまで地の増減に関してだけの意味のものです。

 

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