【 第1部 】 実戦でよく現れる小ヨセの形

第一線のハネは、簡単そうに思えますが、実は、小ヨセの主役と言ってもいい手で、バリエーションが多い。けして甘く見てはいけません。

→ パターン1

第一線のハネで、一番、基本的なのは、これでしょう。俗に、ヘボが打ってもハネ継ぎ2目と言われるヨセです。もちろん、その価値は、2目です。

想定図は、

 黒からヨセた時の想定図をもとに、白からヨセた時の想定図を考えます。
 黒地、1目減。白地、1目増。よって、これは、2目のヨセです。一応、計算しましたが、これは、さすがに見ただけで2目と分かって欲しいですね。何しろ簡単ですから。

→ パターン2

これも簡単。第一線のハネ継ぎでの典型的な片先手のパターン。その価値は、先手3目(両後手換算6目)です。

想定図は、

 これは、白からヨセた時の想定図をもとに、黒からヨセた時の想定図を考えます。
 黒地、1目増。白地、2目減。このヨセは、黒の先手。よって、このヨセの価値は、先手3目のヨセとなります。

 パターン1とこのパターン2が第一線のハネの基本ですね。なお、似たような形で、両先手の第一線のハネがありますが、それは、ここのパターンには含めません。それは、もちろん、両先手は、価値を図る必要なく、優先して打つヨセだから。ヨセの基礎知識のところでも書きましたが、一応。

→ パターン3

今度は、パターン1に段階のヨセが加わる場合。このタイプのヨセは、実戦でしょっちゅう出てきます。同じ後手ハネ継ぎを打つなら、こういうのを逃さないようにしたい。次の形は、4目です。

想定図は、

 白からヨセた時の想定図をもとに、黒からヨセた時の想定図を考えます。
 黒地2目増(H1、O14)。白地2目減(E1、E2、E3、アゲハマ1目、計4目が、P17とアゲハマ1目、計2目になっている)。これは、両後手のヨセですから、4目のヨセです。

 類似形で、こんなのもありますので、やっておきましょう。この形は、O14に黒石が加わっただけ。ところが、それだけで1目価値が下がるのです。つまり、これは、3目のヨセとなっています。

想定図は、

 同じく、白からヨセた時の想定図をもとに、黒からヨセた時の想定図を考えます。
 この場合は、黒地、1目増。(この場合も段階のヨセ、黒5のアテがありますが、それによって、黒地は増えていない。)白地は、変らず、2目減。
 ゆえに、このヨセは、3目の価値のヨセとなっています。

→ パターン4

今度は、ハネに相手が押さえると損をするので、手抜きが普通の場合です。こういうタイプも実戦では、しばしば見かけます。次の形は、4目です。

想定図ですが、このパターンは、黒、白、ともに注意したいことがあります。

 黒からヨセた時の想定図をもとに、白からヨセた時の想定図を考えます。
 黒地、1目減。白地、3目増。よって、これは、4目のヨセになります。

 それから、補足として、白からヨセた時、黒は、なぜホウリ込んではいけないかを示しておきます。これ、僕も最初、分からなかったので、碁盤掲示板の記事No.189にて、あさださんとmakoさんに質問しまくって、ようやく理解出来ました。(ふぅ。)

 まず、考えやすい左辺図から。これを上辺図の想定図と比べてみます。
 黒地は、2目減(A13、B12)ですが、アゲハマが2目ありますので、差し引き0。白地も2目減で、アゲハマ2目で差し引き0。ゆえに、この左辺の想定図は、損得なしで、上辺図と同じ白の先手4目のヨセとなっている。

 次に、下辺図を上辺図の想定図と比べてみます。
 半コウは、ややこしいので、まずおいておきます。黒地は、2目減(G1、H2)ですが、アゲハマ3目で、1目増。白地は、2目減(L1、L2)ですが、アゲハマ2目で差し引き0。よって、半コウ分を抜きに考えれば、この図は、上辺図より、白が1目損した形。しかし、半コウを白が取る権利が1/3ありますから、結局、白は、2/3目損ということになる。ゆえに、下辺の想定図では、白の先手3と1/3目のヨセとなっている。

 この2つのヨセを折半する。すると、最終的に、ハネにホウリこまれた場合は、白先手、3と2/3目のヨセになっていることになります。

 というわけで、ハネに黒がホウリ込むのは、4−( 3+2/3 ) = 1/3目 白に損させただけで、白を先手にさせてしまう悪手ということになります。

 ちなみに、後手4目は、先手2目と同等なのは、分かってますよね。つまり、もし、ホウリコミを打つことで、2目を超えて、白に損させて、先手にしたのなら、黒、いい。しかし、この場合は、1/3目ですから、全然、話になりません。

《 ヨセ用語解説 》
 折半 (せっぱん)
 折半という言葉が始めて出てきたので、解説しておきましょう。これは、段階のヨセのうちで、両後手のケースで使われるヨセの専門用語です。基礎知識のところでは、段階のヨセが両後手の場合、どちらがヨセるか分からないので、両方が平等の権利を有していると見て、釣り合いの取れる線引きを考えると、たしか書きましたが、この作業をヨセ用語で言うと、折半する。と言います。これは、結構、便利な言葉です。想定図で線引きを考えるのは、簡単なヨセなら問題ないのですが、ちょっと複雑なヨセになると、無理なことが多い。そんな時は、双方からヨセた図を考えて、比較ののち、計算して割り出すしかないのですが、こんなケースをも含めて、一言で表せるのが折半という言葉です。

 一つ忘れていたことがありましたので、一図、追加です。‘’ハネになぜ白は、手抜きが普通なのか?‘’です。まず、一番最初に、これからやらなくちゃいけませんでしたね。

 ついでだから、例外の話を。白、黒のハネに受けると、黒を先手3目のヨセにしてしまい損なので、普通は、受けないわけですが、例外的に、黒のハネに白は押さえたほうがいい時があります。(他の受けはダメです。)それは、盤面で、このヨセの後、残るヨセが、2目未満のヨセしかない場合です。その場合は、黒を先手にしても、次の他のヨセで、黒は、1目分を取り返せません。また、同様に、白の立場から見て、黒を後手にしても、後のヨセで、2目以上のヨセがなければ、損してしまいます。よって、その場合は、白は押さえるのが、最善の一手となります。(白、黒のハネにどう受けても計算上は、黒の先手3目になりますが、この場合は、段階のヨセが残らずに、強制的に、黒のヨセが先手3目になる押さえだけが正しい。段階のヨセが残っていたりすると、後手になっても、続けて黒、打ってくることになりますからね。)

 例えば、こんな局面は? 上辺図の黒のハネに、あと、盤面で、残るヨセで一番、大きいものが、下辺の1目だった場合です。→ この場合は、白、後手になっても押さえが正しい。

 白、ハネに手抜きすると、上辺のヨセは後手4目。しかし、白、押さえると、先手3目。そして、このヨセの差は、6目(先手3目、両後手換算)−4目 = 2目。 つまり、後のヨセに2目に相当するヨセがなければ、白は、押さえて、後手になったほうが得ということは、計算上からも導き出されます。

 ちなみに、上の図で、下辺のヨセが1と1/2目のヨセだったとしても、2目未満ですから、白は、ハネに押さえたほうが得です。

 もっと詳しいことが知りたければ、碁盤掲示板の記事No.189 の最後のほうの記事がそれに当たるので、読んでみて下さい。ただし、僕のトンチンカンなレスも入っているので、くれぐれも早合点しないように。^^;

→ パターン5

 次は、パターン4と形は似てますが、白からハネた時が先手になるケースです。当然、黒のハネは逆ヨセとなり、パターン4より価値は大きくなります。次の形は、逆ヨセ 3と2/3目(両後手換算 7と1/3目)です。

想定図は、

 黒からヨセた時の想定図をもとに、白からヨセた時の想定図を考えます。
黒地、2目減。
白地、1目増にアゲハマ1目で2目増となるが、半コウ分があるので、1/3目減。よって、計 1+ 2/3目増になる。
また、このヨセは、白の先手ヨセ。
ゆえに、このヨセの価値は、白の先手 3+2/3目(両後手換算7+1/3目)になります。

 あと、白からヨセた時の想定図で、白の継ぎになぜ、黒は押さえないといけないか証明します。
 これは、白が先手となった図(上の想定図で言うと、下辺図黒11まで。)を原図として、そこから、どうヨセ合うのが双方にとって、最善かを考えれば、いいですね。

 まず、白の継ぎに黒、手抜き。つまり、両後手のヨセになると見ると、

 

 下辺図をもとに、上辺図を考えます。
すると、黒地、アゲハマ入れて、3目増。白地、増減なし。計3目。ただし、これは、白に、半コウを取る権利が1/3ありますから、3目のヨセにはならず、結局、両後手の2と2/3目のヨセということになります。

 次に、白の継ぎに、黒、オサエと見た白の片先手のヨセと見ると、

 これも下辺図をもとに、上辺図を考えます。
すると、これは、黒、白地とも増減はなし。ただ、コウの分だけ、白地1/3目増。これは、白の先手ヨセだから、結局、これは、白の先手1/3目のヨセということになる。

 ここで、黒の立場から考える。両後手のヨセと考えると、2と2/3目のヨセとなった。これは、つまり、黒にとって、1と1/3目を越える得が出来るのなら、白の片先手のヨセにしたほうがいいと解釈出来る。
 実際には、白の先手ヨセとなった時は、1/3目だから、黒は、2と1/3目、得している。

 よって、白からヨセた時の想定図は、白の継ぎに、黒のオサエは、必然ということになります。

以下、補足図で、もうちょっと他のことを考えます。

 上の補足図を正しい黒からヨセた時の想定図と比べることによって、次のことが分かります。

 上辺図。黒が、ホウリこまずに外から押さえた場合は、黒地2目減(M18、M19)。白地は、3目増(G18、H19、J19)。よって、これは、白の先手5目のヨセとなっています。つまり、黒、ホウリこまないと、先手1+1/3目分、損してしまうのです。よって、白からヨセられた時、黒は、ホウリコミが正しい応手となります。

 下辺図。白がハネずに下がれば、黒地、増減なし。白地3目増(G2、H1、J1)。よって、これは、白の先手3目のヨセとなっています。つまり、白からヨセる場合、ハネずに下がると、先手2/3目分、損。よって、白からヨセる場合は、ハネが正しい手となります。

さらに、もう一つ、補足図です。

 今度も、この2つの図を正しく黒からヨセた時の想定図とそれぞれ比べます。

 上辺図。段階のヨセを黒からヨセた場合⇒ やっぱり、まず半コウ抜きで考えます。黒地は、3目減 + アゲハマ3目。差し引き0。白地は、1目増 + アゲハマ2目で3目増。しかし、白には、まだ半コウの権利1/3がありますから、結局、この図からだと、白の先手3+1/3目のヨセということになる。

 下辺図。段階のヨセを白からヨセた場合。⇒ 黒地は、3目減 + アゲハマ2目。差し引き1目減。白地は、1目増+ アゲハマ2目ですから、3目増。よって、この図からだと、白の先手4目のヨセということになる。

 この2つを折半すると、結局、このヨセは、白の先手3+2/3目のヨセということになります。

 ゆえに、ホウリコミには、白、抜いても、一本伸びても、価値は変りません。

 さらに、もう一つ補足図です。これが最後です。

続き。

 上の図の場合は、白のハネには、黒は、ホウリ込まずに、外から押さえ、白の先手5目のヨセになるのは、言うまでもないでしょう。これで、補足図も終わりです。

→ パターン6

 似たような形が続きます。今度は、パターン4、5の形で、2線の白が2本になっているケース。これも実戦でよく出てきますね。次の形は、先手1目(両後手換算2目)です。

想定図は、
まず、黒からヨセた場合です。

次に、白からヨセた場合です。

 白からヨセた時の想定図をもとに、黒からヨセた想定図を考えてみます。
 黒地、増減なし。白地、1目減。これは、黒の先手ヨセ。
 よって、このヨセは、黒の先手1目(両後手換算2目)となります。

 ただ、このヨセには、一つ注意したいことがあります。それは、黒のハネに、白が手抜きしても、そう大きいヨセになるわけでないので、打つ時期を誤ると、白に手抜きされる可能性が高いということです。
 ここで、黒のハネに白が手抜きした場合、どんな大きさのヨセになるか、考えてみましょう。

 白からヨセた時の想定図をもとに、黒のハネに白が手抜きした時の想定図を考えてみます。

 黒地、3目増。それにアゲハマ2目。計5目。
 白地、4目減。
 これは、後手ヨセ。
 よって、黒のハネに白が手抜きすると、9目のヨセになります。

 黒のハネに白が手抜きしなければ、先手1目(両後手換算2目)ですから、その差7目。これは、つまり、黒がハネてきた時、他に、7目を越えるヨセがあれば、白は手抜きしたほうが得ということです。

 ゆえに、黒のハネが絶対の先手になるのは、盤面で最大のヨセが7目以下の時というのが条件になります。(7目を越えるヨセが残っている場合は、白に手抜きされて、損。)もっとも、相手が分かってなかったら、そうじゃなくても先手になるかもしれませんけどね。^^; それから、念のため、もう一回、断っておきますが、黒のハネが白の死活に関わるような場合は、話は全く変ってきますので、混同しないようにして下さい。

 この形の類似形をもう一つやってみます。この図は、白からヨセた時の段階のヨセが先手になります。

想定図は、

 白からヨセた時の想定図をもとに、黒からヨセた想定図を考えてみます。
 黒地、2目増。白地、1目減。これは、黒の先手ヨセ。
 よって、このヨセは、黒の先手3目(両後手換算6目)となります。

 今まで得た知識があれば、このくらいの違いはなんでもないですよね。 

→ パターン7

 似たような形をもう一つだけ。今度は、2線の白が4本になっていて、さらに、その先が一線のワタリになっているケース。これは、実戦ではどうかなぁ。出てきてもおかしくはないですね。次の形は、です。

次回更新。

 

 

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