ヨセを考える前に必ず知っておかなければならないことがある。それは、通常、一手にどのくらいの価値があるかということだ。これが分かってないとお話になりません。

一手の価値は、大まかに分類すると、4つの時期で変わってくる。そして、その4つの時期とは、1.序盤、2.中盤、3.終盤前期、4.終盤後期、である。最初にまず、それぞれの時期の特徴を理解しながら、その時期における一手の価値に迫ってみましょう。

【1】 序盤の手の価値

序盤というのは、言うまでもなく、布石の時期のこと。一般に一局の碁の平均手数は約230手と言われていますが、そのうち、この序盤の手は、せいぜい30手くらいと言われています。

この時期、どういう手が打たれるかと言えば、隅への着手。シマリ、カカリ、それに伴う第一次定石。そして、大場へのヒラキ。あるいはツメ。このくらいでしょうか。特徴としては、第3線、第4線の手が多いこと。また、石の接触が少ないのもこの時期ならでは。従って、通常の序盤の手の価値は、だいたいが同じと考えられます。では、具体的な価値はどのくらいなのか?

序盤の一手は、自分をだいたい10目、よくする手であり、出入りで考えて、一手は20目強の価値があると言えるそうです。(ある場所に、白が一手打てば、その場所において白が10目よくなりますが、逆に、その同じ場所に黒が打ったなら、黒が10目よくなる。ということで、一手打つことは、差引き20目の価値があると計算されます。出入りついては、またあとでやることになるので、今は、そんなもんかと思っておいて下さい。ここで説明し始めると長くなりそうだし。)

ところで、以下は補足ですが、10目よくする手という意味は、あくまで相対的なものであり、その一手で、地、あるいは勢力が、10目増えると考えるのは、完全な間違いではありませんが、正解でもありません。それを理解するために、次の参考図1を見て下さい。三連星対ニ連星の序盤の模範布石です。模範布石ですから、変な手は一手もありませんし、ここまで形勢互角と思われます。

《 参考図1 》
参考図1

この参考図1の最終図を全局的にどうか考えてみましょう。最後が白ですから、差引き0になるはずです。

まず、右上隅は、黒石4個、白石3個で、黒が10目リード。
次に、左上隅は、黒石6個、白石6個で、差引き0。
そして、左下隅は、白石2個で、白が20目リード。
また、右下隅は、白石1個、黒石1個で、差引き0。
さらに、下辺に黒石が一個ありますね。これで下辺で黒が10目リード。
これを黒、白、それぞれ合計して引き算すると、
黒が20目−白が20目=0
ゆえに、この序盤の形勢は互角とみることが出来ます。

かなり話が横道に。(^_^;) 僕が言いたかったことは、序盤の手は、変な手でなければ、相対的に、自分をだいたい10目よくする手であり、それは、出入りで考えると、その倍。よって、序盤の手は、20目強の価値があるということだけです。これを単に憶えておくだけで充分で、あとのことは、無視して構いません。というか無視して下さい。(笑) 実は、僕も自分で説明してて、頭が混乱してるんです。(^_^;)

【2】 中盤の手の価値

中盤は、いわゆる碁の花形。これがなければ、碁を好きになる人なんて、きっといないのではないでしょうか。この時期、どういう手が多いかと言えば、もうそれは戦いの手がほとんどいっても過言ではありません。隅、辺、中央で、両者とも、少しでも自分が有利になるように頑張った手を打ちますので、ほとんどの場合、どこかで、両者は衝突することとなり、争いは必至です。

そこで、中盤の手の一手の価値なんですが、結論から言うと測定不可能です。そもそも、戦いの手は、何目とか考えられるのもではありません。たとえ、地がつきそうな手でなかったとしても、それは、相手の急所で重要な一手であったり、拠点を奪う一手であったり、目数では計れない別の意味の価値がある場合がほとんどだからです。ですから、目数で考えること自体無意味と思われます。でも、そこをあえて、考えるとすれば、やはり、序盤の手の20目強+αじゃないでしょうか。比較は出来ませんが、序盤の手の価値より劣るとは思えませんから。

ところで、中盤の手を考える際、実は、その価値よりもっと重要と思えることがあります。それは、序盤の手の価値のところでも書いたように、一局の手数は、約230手。そのうち、中盤の手と言えるのは、普通、100手未満ということです。戦いには、不思議な魅力があり、つい、もっと手数があると思われがちなのですが、存外少ないのです。これがどういうことかというと、1局のうち、序盤と中盤で、約100手強。ということは、残りは、なんでしょう?そうなんです。一局のうち、半分以上の手がヨセの手に属するのです。ヨセの手の価値は、後から述べるように、序盤、中盤の手に劣りますが、半分以上がヨセの手なんですから、たとえ、戦いでちょっとリード出来たとしても、ヨセに強くならなければ勝負に勝てないというのは、何も不思議なことではないのです。

【3】 終盤前期の手の価値

中盤の大きな戦いが終わり、一局の碁が収束に向かう・・・。終盤とは、もちろん、ヨセのことです。ところが、そのヨセなんですが、ここで終盤を前期と後期に分けたように、大きく2つに分けられます。なぜ分けて考えなければいけないか?それは、一手の価値が違うことももちろんありますが、性格が全く違うからです。それをまず知っておきたい。なお、ここで言う終盤前期とは、いわゆる大ヨセ、後期は、小ヨセと呼ばれています。

では、終盤前期の大ヨセについて。(ここから先は本に書かれていることより、僕が考えていることがメインになります。あくまで参考程度に。強い人がここから先を読んだら、笑うかもしれない。(^_^;) )

最初に、こんなことはどの本にも書かれていないが、大ヨセを知るために、一番大切なことは、一局のうち、いつが大ヨセなのかということを自分で判断出来ることだと思う。これが、特に、初心者のうちは、非常に気がつきにくい。(もっとも僕も分かってきたのは最近ですから、人のことは言えません。(^_^;) )考えても見て下さい。いつが大ヨセなのか自分で分かってないのに大ヨセの手が打てますか?もっとも、ヨセのことなんて何にも考えてなくても勝てるような人ならば、こんなことはどうでもいい話だと思いますが。ここで最近、僕が発見した、いつが大ヨセなのかの判断法を紹介しましょう。自分のHPなので、飛ばしてます。(笑)

まず、大ヨセは、中盤の大きな戦いが一段落したあとに訪れるもの。それから、自分の石、あるいは、相手の石に弱い大石がないというのも、条件の一つ。大石を攻めたり、攻められたりすることは、全局に影響する戦いですからね。それから、もう一つ。ホントは、こんな考え方よくないんだと思うんだけど、序盤と中盤のところで、二つ合わせて大体、100手強の手数と書きましたよね。つまり、大ヨセは、手数から言えば、100手を越えたあたりということ。事実、大ヨセの本とかを読んでいると、だいたい、穏やかな棋譜で、90手目くらい、激しい棋譜でも150手目くらいの棋譜で大ヨセを研究してあることが多いです。そこで、僕は、これを逆手に取って、ネット碁って、今が何手か手数表示されますよね。つまり、100手 を過ぎたくらいから大ヨセを意識してはどうか思っています。僕自自身は、今のところ、100手を過ぎて、両者とも弱い石がなかったら大ヨセと思うことにしてます。これがまんざら、間違いでもないみたいなんですよ。

ここで、参考図2を見て下さい。これは、栄光の今月の僕の会心譜です。(ますます飛ばしてます。爆 )

《 参考図2 》

もちろん、僕は黒番ですが、この棋譜で、白が85手目に、左下隅に2線のコスミを打ちました。2線のコスミは、大ヨセの代表手の一つ。ですから、白の方は、もう大ヨセを意識しているなぁと思いました。ここで僕は、押さえると、後手をひいてしまうので、右下隅のスソ空きのほうが先手で止めれるから、そちらのほうに周りました。そして、それは思惑通り進行したんですが、黒92手は小さい手でしたね。当然手を抜かれ、白93手目で、白に左下隅に飛び込まれました。ちょっとあせったんですが、白99手で後手になり、その間に、僕は、100手で隅の黒を中央の黒に連絡させました。

そこで、この局面どうでしょうか?白、黒、ともに、もう弱い石はない。そこで、僕は、ここで大ヨセに入ったと判断出来ました。もっとも白の方は、とうに大ヨセと判断されてるようでしたけど。(人は人。(^_^;) ) この棋譜のように、過去の自分の棋譜をいろいろ調べてみると、やはり、穏やかな棋譜で100手を越したくらい、激しい棋譜で150手くらいで、戦いが一段落し、双方、弱い石がなくなってることが多いのに気がついたんです。なお、これは、僕の個人的な意見でしかも、人それぞれ違うと思うので、あくまで参考までに。なお、初心者同士の対局ほど、大ヨセの時期は遅れてくると思います。僕も人のことは言えませんが、それはもちろん、序盤、中盤でヨセの手をばんばん打ちあっているからです。

ここで、さらに話は横道にそれます。(笑) 僕は、大ヨセの時期を意識するようになって一つ気がついたことがあります。形勢判断ってありますよね。あれもいつするんだろうと思ったことありませんか?僕は、以前、ホントの終盤、秒読みの時にするものだと思ってました。ところが、そんな段階だと数えるのは、容易でないですよね。時間がないというのに。強い方は、どうやって数えているのかなぁとずっと考えてました。

ところが最近になって、形勢判断をする時は、局面が大ヨセの段階に入った時だということに気がついたんです。あとで、出てきますが、小ヨセとは、実は計算出来る世界。つまり、両者とも強い方だったら、正しい道は一本だけということ。こんな段階で、どっちが地が多いなんか考えても、時間の無駄だと思いませんか?自分の地が少ないと思っても正解の道は一つしかないんだから、はっきり言って、どうすることも出来ません。

その点、大ヨセ段階なら、その後のヨセの方針を決めることが出来ます。例えば、大差でリードしてるようだったら、堅く打つとか、逆に負けてるようだったら、勝負手のような手を打つとか。というわけで、僕は、大ヨセと判断した時は、簡単な形勢判断をすることにしました。その後は、全くしません。ホントに簡単なんです。何しろ境界線がはっきりしてないのに細かく数えようはないでしょう。例にあげると、参考図2の棋譜では、100手になったところで、右上隅、左上隅、左下隅で、10目くらいかな。あと、中央、穴だらけだけど、悪くても50目にはなるだろう。で、黒は、80目。それに対して、白は、上辺はあまり地になりそうもないので、10目。下辺はちょっと大きいかで20目。あと、左辺は、多くても30目ぐらいだろうで、白は、60目。つまり、この時点で、20目はリードしていると判断しました。(あくまで、僕の判断です。文句言うのは禁止。(笑))よって、これから先は無理せず堅く打ちました。

でも、さすがに終局で、わずか4目差しかなかったのには、あせりましたが。ちょっと甘くうちすぎたみたい。でも勝ったので自分では、良しとしてます。

えーと、笑われるのを承知の上で僕が思っていることを書きなぐったところで、(笑) 大ヨセの価値の話。本で調べてみると、10〜20目、あるいは、15〜20目とされています。つまり、中盤の手より少し劣るってわけですね。ヨセだから当然ですが。なお、2つ候補があっては困るので、この後、このコーナーでは、大ヨセは、基本的に10〜20目の価値ということに僕は、決めました。どちらにするか決めるにあたり、15〜20目の範囲は問題なく大ヨセだと思うのですが、10〜15目は、どっちに含めるべきか結構、悩みました。小ヨセってぽいのもあれば、大ヨセっぽいのもありますので。しかし、わずかに大ヨセっぽい性格のほうが強いと判断して、おおよそ大ヨセということにしました。ですから、10〜15目の手でも、場合によっては、僕の判断で、小ヨセに含める場合もあることを最初にお断りしておきます。

次に、大ヨセの時期の特徴です。大ヨセは、ヨセでありながら、実は、まだ戦いととなり合わせという要素を含んでいます。ただし、中盤と大きく違うところは、それは、あくまで境界線をめぐる局地戦だということです。ですから、通常は、ある程度で双方、妥協して、収まるところで収まります。ところが、自分も含めてなんですが、へたをすると、小ヨセの段階でも、受けそこなったり、あるいは遠慮のしすぎで、大きな戦いに発展することもなきにしもあらず。こういうのは、大ヨセあるいは、小ヨセから中盤に逆戻りしていると言います。こういう場合は、どうしようもないですね。ヨセを考える以前の問題です。大ヨセが難しいと言われるのは、こういうところにもあると僕は思う。

なんか余計なことを書きすぎたと思いつつ(笑)、大ヨセの価値について終わります。

【4】 終盤後期の手の価値

最後は、終盤後期の手、つまり、小ヨセについて。もう分かっていると思うので、最初に結論を。小ヨセの手の価値は、基本的に1〜10目です。

小ヨセの時期の大きな特徴として、一局のうち、唯一、計算出来る世界だということです。今まで、序盤、中盤、終盤前期と一手の価値を考えてきましたが、おおよその価値は予想がつくものの、完全なものではありません。つまり、そこには、感覚的なものが要求されているのです。ところが、小ヨセはそうではありません。感覚的なものの必要性はほとんど0に等しい。ですから、小ヨセは、勉強すれば、すぐに目に見えて効果が現れてくるのではないでしょうか。今まで、終局後、いつもわずか数目差で勝ったり負けたりしている相手なら、必ず勝てるようになれるかもしれませんね。けして、小ヨセでつく勝負は、運なんかではないということです。